「徒然草」(吉田兼好/角川書店編)

現代にも通じるありがたい言葉が満載です

「徒然草」(吉田兼好/角川書店編)
 角川ソフィア文庫

高校生の頃、
古文の時間が退屈でした。
私は理系クラスでしたが、
決して文系教科をおろそかに
していたつもりはありません。
文法や問題の解き方などが中心で、
古典作品を味わうことや
作品に込められた精神などに
ふれることがほとんどなかった
からではないかと思います。

そう思うのは、本書を読んで
「徒然草ってこんなにいいことが
書かれていたのか」と
素直に感じることができたからです。
現代にも通じる
ありがたい言葉が満載です。

「独りともし火のもとに文を広げて、
 見ぬ世の人を友とするぞ、
 こよなう慰むわざなる。」

(独り灯火のもとで読書して、
 作者や登場人物など、
 知らない昔の人を友とするのは、
 何よりも心が安らぐ。)
ネットもなく
交際範囲の限定された環境の中でも、
兼好は読書によって
人と繋がっていたのです。
今の若い人に、この感覚をぜひ
学んでほしいと思います。

「すべて、何も皆、
 事のととのほりたるは
 悪しきことなり。
 し残したるを、
 さてうち置きたるは、
 おもしろく、生き延ぶるわざなり。」

(何事においても、すべて完全に整い、
 完結しているのは、かえって、
 その仕事の命が終わることになり、
 よろしくない。
 やり残した部分を、
 そのままに放置してあるのは、
 味わいも深く、仕事の命を将来に
 つないでやる方法なのだ。)
完璧主義を戒めるような言葉です。
不揃いでもいいのです。
不完全であっても、
それは後に完全になる
楽しみを残している。
こうした心の余裕こそ、
現代に必要なのかもしれません。

「つれづれわぶる人は、
 いかなる心ならむ。
 紛るる方なく、
 ただ独りあるのみこそよけれ。」

(時間をもてあます人の気が知れない。
 何の用事もなくて、独りでいるのが、
 人間にとっては最高なのだ。)
なにも「孤独になれ」と
言っているのではありません。
自分の時間を大切にし、
社会の中で自分を貫く覚悟を持て、と
言っているのだと考えます。

吉田兼好が
この徒然草を著したのは1331年。
今からざっと680年前。
物事の本質というのは、
時代が移ってもそんなに
変わるものではないのかもしれません。

物語とはちがい、
どこから読んでも大丈夫。
私はぱらぱらとめくって、
気に入ったところを
何度も読んでいます。
春の読書に徒然草、いかがですか。

(2020.3.7)

TYISさんによる写真ACからの写真

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